背骨コンディショニングと整体に関する覚え書き

かねてより信頼している二つの整体理論がある。ひとつは背骨コンディショニングで、もうひとつが野口晴哉/片山洋次郎 両氏の理論だ。背骨コンディショニングは、主に自律神経の問題を背骨のズレで説明する理論だ。後者はより有機的に、背骨がズレる/ハマる原因を探求し、調整していく見方になっている。

背骨コンディショニングで一応全てを解決できると仮説している。ストレスであれ、日常の運動の偏りであれ、それらが原因で背骨がズレてしまったならば元に戻せばいい。背骨コンディショニングの治療は三つのステップを経由する。①背骨を緩める ②背骨を矯正する ③筋トレ。おそらく③が非常に特徴的だ。というのも、どんなストレスであれ——たとえば精神的ストレスであれ物理的ストレスであれ——、結局のところ筋力が不足しているのが問題なのだ。筋力が当のストレスに耐えられないから、背骨が歪む。

それに対して野口/片山 両氏は、たとえばストレスを仔細に分類しているように思われる。具体的には、体癖と呼ばれる身体的特徴の分類に対して、どのような要因がストレスとして作用しやすいか、そしてそのストレスに対してどう向き合えばいいかを観察している。あるいは、実際に身体がどのように向き合い、反応しているかを観察している。この理論もかなり説得的だ。背骨コンディショニングでは、背骨の凝りを運動によって解消することになるが、たとえば、僕の観察によれば、下痢をすると胸椎の凝りが和らぐ。野口/片山理論はこのことを実証的に説明できるの一方で、背骨コンディショニングの理論は下痢の原因そのものを言い当てることはできるかもしれないものの(たとえば、胸椎N番がズレている、という仕方で)、下痢の作用そのもの、あるいは下痢の生理的な目的を示すことができない。

とはいえ、背骨コンディショニングの良さは、その単純明快さにある。「筋トレをすれば救われる」「筋肉は裏切らない」といった、数年前に流行った標語の有効性を実際に示している。必要な筋トレをすれば、自律神経由来のあらゆる不調は改善できるのだ。

野口/片山理論は、個々人の差異を考えることを可能にしている。「僕の身体は、どういうときに胸椎が凝ってしまうのか。どうすれば凝りを解消できるのか。」こういったことを考え、検証する余地を残している。だが、ソリューションを発見するのは長い道のりだ。背骨コンディショニングに頼っていれば、或る一定の筋トレをすれば解決する。工夫して検証する一方で、日々の努力としては背骨コンディショニングが提唱する筋トレを行う。これが最適解ではなかろうか。